第159回 7日間の法定休日の復活
今年から法定労働時間が週40時間に変更されることに対応し、労働時間の確保を目的として、労働部は昨年12月に「労働基準法施行細則」第23条を改正し、▽1月2日(開国記念日翌日)▽3月29日(革命烈士記念日)▽9月28日(孔子生誕記念日)▽10月25日(台湾光復節)▽10月31日(蒋介石元総統誕生日)▽11月12日(孫文誕生日)▽12月25日(憲法記念日)──の法定休日7日間を削除した。ところが、立法院は3月28日、議会で当該改正案の届け出を否決。これを受け労働部は2カ月以内に当該改正案の訂正または廃止を求められたが、期限が過ぎてもこれに応じなかったため、行政院は6月21日に当該改正案の失効を正式に公告し、かつ7日間の法定休日復活を宣言した。
既に過ぎた開国記念日翌日の1月2日、革命烈士記念日の3月29日の2日間についてはさかのぼって休日とはされないため、次の法定休日は9月28日となる。
ただしこれは一時的な措置である。すなわち、労働基準法改正前の法定労働時間は2週84時間であり、また、労働基準法第36条には労働者は7日間勤務につき少なくとも1日の休日が必要と規定されていた。しかし実際には、多くの会社は法改正前には公務員週休2日実施弁法に倣っており、週休2日を実施する代わりに、上記の7日間の法定休日をほかの労働日に振り替えて、労働時間を確保していた。
しかし、法定労働時間が週40時間に改正された後も一部の会社では週休2日が実施されていなかった。そこで、現在、7日間の法定休日が一時的に復活している。
このため労働部は、週休2日の全面実施後は、当初の予定どおり7日間の法定休日を取り消すことを予定している。
なお、労働部によれば、既に週休2日を実施していても、復活した法定休日を必ず休日としなければならない。これに従わない場合、2万台湾元以上30万元以下の過料が課されることがある。
多くの会社は既に下半期の予定を立てており、法定休日が突然増やされたことに当惑している。
なお、使用者は法定休日をほかの労働日に振り替えることができるが、その場合には、労働部の2015年4月23日付労働条1字第1040130697号解釈令において、「労使双方は法定休日と労働日の入れ替えについて協議できるが、当該協議は個別の労働者の労働条件の変更に関わるため、各労働者本の同意を得なければならない」とされているため、各従業員の同意を得なければならないことに注意が必要である。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。