第170回 台湾の公正取引法における「結合」
公正取引委員会により2016年11月16日に日月光半導体製造(ASE)と矽品精密工業(SPIL)の「結合事案(本件ではASEによるSPILの全株式の買取り)」が承認された。両社はいずれも半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)大手の上場会社であり、結合後は世界市場占有率が29%(第1位)に達することから、本件は台湾で大きな注目を集めた。
世界市場の29%へ
「結合」とは、一般には「M&A」または「合併・買収」といい、公正取引法第10条で「本法でいう結合とは、事業者が以下の事由の一に該当する場合を指す。1.他の事業者と合併する場合。2.他の事業者の株式または出資額を保有または取得し、他の事業者の議決権付き株式総数または資本総額の3分の1以上に達する場合。3.他の事業者の事業、または財産の全部または主要部分を譲受または賃借する場合。4.他の事業者と経常的に共同で、または他の事業者の委託を受けて経営する場合。5.他の事業者の業務経営または人事を直接または間接的に支配する場合」と明確に定義されている。ASEとSPILの結合事案は上記の第2項に該当する。
また、公正取引法第11条には、「事業者が結合する際、以下の事由の一に該当する場合、事前に主管機関に申告しなければならない。1.結合により、事業者の市場占有率が3分の1に達する場合。2.結合に参加する1事業者の市場占有率が4分の1に達する場合。3.結合に参加する事業者の前会計年度の売上額が主管機関の公告する金額を超える場合」と規定されている。違反した場合は、同法第39条により、主管機関によって結合を禁じられ、期限を指定の上、▽事業者の分離▽株式の全部もしくは一部の処分▽一部事業の譲渡▽免職──を命じられる。20万台湾元以上、5,000万元以下の過料など、その他の処分が下されることもある。
近年、結合の申告を事前に行わず、処罰を受ける事例が少なくない。貴社と他社間で株式を売買するなど、公正取引法第10条、第11条に該当する可能性がある場合、必ず法律の専門家に相談し、結合の申告における要件につき確認していただきたい。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
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執筆者紹介
国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。