第187回 台湾での健康保険について
現在の台湾の健康保険は「第2世代健康保険」(「第1.5世代健康保険」と呼ばれることもある)と呼ばれており、これは第1世代健康保険と呼ばれていた過去の健康保険の財務悪化を改善するために、2012年以降に導入されている。
なお、第2世代健康保険の主な特徴は、保険料率を計算するための所得基礎の対象がそれまでよりも拡大された点、および所得に応じた保険料率の上限が上げられた点である。
現在、所得(即ち保険加入対象報酬)に応じた保険料率の上限は6%とされている。
次に、保険料率を計算するための所得基礎とされる所得には以下のものが含まれる。
- 経常的な賃金収入
- 月給の4カ月分を超える、保険加入事業者(即ち使用者)から支給される奨励金
- 保険加入事業者以外から得たその他の賃金収入(即ち兼職の収入)
- 業務執行による収入
- 株式配当による収入
- 利息所得
- 賃貸収入
つまり、個人に年度内の経常的な賃金収入の他に利息、配当金、月給4カ月分以上の奨励金、兼職または業務執行による所得がある場合、これらの経常的な賃金収入以外の収入も保険料の算定基礎として計算・納付しなければならない。
また、雇用主は追加で保険料を負担する可能性がある。雇用主が自己の従業員に対して支払う毎月の賃金所得総額から、その月に従業員のために付保する標準報酬月額を差し引いた後、なお、実際に支払った月給総額と付保の計算に使う標準報酬月額とに相違がある場合、この当該相違額については追加保険料を納付しなければならず、この保険料率は2%と定められている。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。